ミレーナについて
<ミレーナとは?>
「ミレーナ」はレボノルゲストレルという女性ホルモン(黄体ホルモン)が5年間、子宮の中で続けて維持されるようにした薬剤徐放システムです。
2014年に厚労省が過多月経、月経困難症の治療法として保険適応を認めた、保険診療としては比較的新しい治療法ですが、ミレーナそのものは1990年にフィンランドで開発され、日本では避妊用として2007年から自費で採用されていました。
<効果は?>
月経の量、痛みが激減します。
10人中7人の方がミレーナを使用する前の月経の苦痛度を10とした場合、2~3に軽減します。
ナプキン代も激減します。さらには10人中3人の方が無月経になります。
ただ、排卵はしており、受精もしますが、ミレーナが子宮内にあることで受精卵が着床しないので妊娠は回避され、避妊となります。
ただ、もしも途中でお子さんを望まれるようになった場合は一瞬で抜去できます。
【挿入対象者】
・経腟分娩経験者
【挿入対象外】
・未産婦 ・帝王切開のみの方 ・授乳中の方
<費用は?>
避妊の適応も正式に認められており、自費診療で約3万円、5年間有効です。
過多月経、月経困難症では健康保険の適応となり、3割負担ですので、
5年間で約1万円となります。
経口ホルモン剤(いわゆる低用量ピル)ですと、どんなに安くても5年間で15万円はお薬代だけでかかってしまいますし、毎日できるだけ一定の時間に薬を飲まないといけません。しかも最近の低用量ピルは効果が出るところまでぎりぎり薬の量を低くおさえてありますので、2日も飲み忘れると不正性器出血が起こりますし、胃腸の調子が悪くて嘔吐などが続いた場合も不正性器出血がおこってしまいますが、そのようなことはミレーナにはありません。
<挿入後の受診は?>
ミレーナは5年間女性ホルモンを放出し続けるシステムで、「お薬」です。
従って最低1年に1回の採血検査が必要です。
また、抜去用のひもが膣内に出ているために、膣分泌物(おりもの)や子宮頚がんの検査が最低1年に1回必要です。
採血検査を行うときはできるだけ食事から3時間経過していることが望ましく、
おりもの検査を行うときは出血のない、月経前が望ましいと思います。
健康保険支払基金からの指導により、一度にすべての検査を行うことが難しい状況があります。半年ごとに
・内診、超音波、おりもの検査、子宮頸がん検査を行うとき
・内診、超音波、採血検査を行うとき
の年2回の受診が必要です。
<実際の受診は?>
まずは婦人科診察でご予約ください。
詳細な手順はこちらをご覧ください。
子宮の出口を通して体癌検査やミレーナの挿入をする場合に若干の痛みがありますが、
そこはいろいろなコツがありますので、その場でお伝えし、できるだけ苦痛が少なくなるようにしています。
出産経験がなくても、帝王切開術の経験のみの方でも、もう少し工夫を追加すればそれほど苦痛なく挿入はできるかと思います。
診察室でご相談ください。
【ミレーナ挿入時の麻酔(傍頸管ブロックについて】2024.07.31
ミレーナ挿入時の疼痛が心配な方や、体癌検査の際に疼痛が強かった方、前回ミレーナ挿入時の疼痛の強かった方などに朗報です。
当院ではミレーナ挿入時に局所麻酔(傍子宮頸管ブロック)を行うことができます。
抜歯などで使われる局所麻酔薬を子宮頚管に局所注射するものです。
現在、当院での流産手術はこの方法で行っており、大変有効です。
ただし、麻酔後1時間程度の院内安静が必要となりますので、あらかじめ日時を決めて外来終了後の午後に行います。
詳細は受付までお問い合わせください。
傍子宮頚管ブロック説明同意書はこちら
<ミレーナの入れ替えをご希望の方へ>
【ミレーナの抜去・再挿入の手順を変更します】2024.07.31
説明文書はこちら
<副作用などは?>
ミレーナを装着して最初の2~3か月程度は不正性器出血が続くことがあります。
もっとも出血といっても茶色で少量のため、おりものシートで対応できる場合が多いのが実際です。
赤い出血が以前の月経と同じように出る場合はミレーナがずれているかもしれませんので受診してください。
およそ6%(17人に1人)に起こります。その場合も対処法があります。
万一、入れなおさないといけない場合も2回目までは保険適応となります。
あと、これは作用でもありますが、ミレーナ使用中は妊娠が成立しません。
<あまり聞いたことがありませんが?>
出産未経験の方が主体のオフィス街の婦人科はピルが主体となるので、あまりミレーナの話はされないと思いますが、当院はお産をされた方が多く来られているので、出産経験者にはこちらの方が適していると思います。
<更年期障害には?>
更年期障害(ホットフラッシュ、発汗、睡眠障害など)はもう一方の女性ホルモンである、卵胞ホルモン(エストロゲン)の不足によってもたらされます。ただ、子宮がある人にエストロゲンの薬剤だけを投与すると、子宮体がんが発生する恐れが高まりますので、予防的に黄体ホルモンを補充しないといけないので、そちらも内服しないといけなくなります。
ミレーナを先に挿入してある場合は更年期の症状が出てきた際に、エストロゲンの塗り薬を腕に塗ることだけで対応ができます。
エストロゲンとプロゲステロンの錠剤を内服し、肝臓を通すことによって、副作用が多々出る可能性が指摘されていますので、
ミレーナの使用によってそれが回避されると考えられています。
<他には?>
乳がん治療後にエストロゲンを抑えるためにタモキシフェンを内服することが多くありますが、その合併症である、子宮内膜増殖症、子宮体がんの発症を抑える可能性が海外では検討されています。
日本では現段階では使用できませんが、十分可能性があると思います。
<最後に>
40年弱、産婦人科診療に携わっておりますが、①経腟超音波による子宮頸管長測定を使用した切迫早産管理、②子宮頸がんワクチン、そしてこの③ミレーナは産婦人科医療の三大「革命」であったと感じています。
出産経験のある方はピルなど飲んでいる場合ではなく、是非、ミレーナを試してみられるべきだと思います。
本当は当院で出産された方には全員ミレーナを入れてほしいと思っています。
(実際には出産から6週間以上経過、できるだけ授乳も終了してからが望ましいので、そう簡単にはいきませんが。)
取り除く必要・希望が出てきた場合は、2秒もあれば取り除けます。
月経でお困りの方、特に月経時痛、過多月経でお困りなお方で出産を経験しておられる方には、
強くミレーナをお勧めしたいと思います。