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ペチロルファン筋注を用いた和痛分娩について

〇 ペチロルファン筋注を用いた和痛分娩について

当院での和痛分娩は「ぺチロルファン筋注」を用いて行っています。

痛みを完全に取り除いて「無痛」にするのではなく、

陣痛の苦痛を「和らげ」、安心して出産に臨めるようにする方法です。

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痛みと分娩進行の状態などにより

3種類の薬を随時使い分けています。

主として用いている ペチロルファンはペチジン塩酸塩と

レバロルファン酒石酸塩の配合薬で、

1967年から使用されてきた、PMDAの認定を受けた添付文書で

「無痛分娩」の適応を持っている、安全性の高い薬剤です。

しかし、1985年ごろからの自然分娩礼賛の時代が

続くうちに現在では忘れられており、

当院院長より少し若い世代の産婦人科医師は

薬剤そのものの名前も知らず、使用経験も無いために、

その有用性を知らない場合が多いのが実状です。

ただその効果は高く、安全性も高いことが確立しています。

英国などでは現在も助産師・産科医師によって多く使用されています。

安全性については後でさらに詳しく記載します。

 

〇 皆さんからお寄せいただいたアンケート結果をお知らせします。

 ぺチロルファン筋注を受けて「良くなかった」とのアンケートを

    書かれた方が一人もおられなかったことには正直、驚きました。

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アンケート結果(40名:2025.01.23~2025.07.10施行例全例 ただし母体搬送症例2例は除く)

• 大変良かった …… 17名(42.5%)
• かなり良かった …… 15名(37.5%)
• まずまず良かった …… 4名(10%)
• 良くも悪くもなかった …… 4名(10%)
• 良くなかった …… 0名(0%)
➡ 40名中36名(90%)が良かった、と評価 しておられます。
________________________________________
実際にいただいた声(一部抜粋)

• 「痛みがすぐに和らぎ、夢の中にいるような感覚でリラックスできた」
• 「陣痛の合間に眠れて体力を温存でき、出産後も疲れていなかった」
• 「陣痛がスムーズに進み、想像よりも短時間で出産できた」
• 「痛みで絶望していたが、麻酔後は楽になり前向きに出産に臨めた」
• 「和痛を打てるだけで心強く、安心して出産できた」
一方で、
• 「効き目が弱かった」
• 「分娩が早すぎて効果が間に合わなかった」
といった声も一部ありました。

ペチロルファン筋肉注射による和痛分娩で、

多くの方が「痛みの軽減」「リラックス」「体力温存」などの効果を実感されています。

 

 〇実際に頂いたお声はこちら

<ぺチロルファン筋注を受けた・大変良かった>17/40

お産の進みが悪かったが、和痛のあと進んだので。

落ち着くことができ、呼吸など整えやすかった。

リラックスして力を抜いてお産ができた。

すぐ痛みが和らいだ。夢の中にいるような感覚でリラックスでき、

 陣痛と陣痛の間はおそらく寝ていたので、出産後も疲れていなかった。

陣痛に集中でき、力を抜くことといきむことが上手にできた。少しボーっと

 しますが、その瞬間は楽で、リラックスでき、陣痛が来たら正しく呼吸をして

 進めることができるようになりました。

 子宮口 6cm → 全開大までスムーズで嬉しかった。

・前日からの陣痛で寝不足だったので、体力が持つか心配だったけれど、

 和痛をしてから少し陣痛の間に眠れて(痛みが和らいで)体力が回復したのが良かったです。

・受ける予定はなかったのですが、あまりの痛さにお願いしました。

 おどろくほど痛みが和らぎました。

・陣痛が来ている中、体勢を変えずに注射を打っただけだったのでとても楽でした。

    注射の後30分後には生まれてましたが、いきみがかかってきた頃には効いてきていて、

     一人目、二人目の時とはくらべものにならないくらい落ち着いて出産できました。

・痛みが和らぎ、気が付いたら眠ることができていた。

    そのためしっかりと出産することへ取り組むことができました。

・出産当日 深夜から明け方の陣痛だったのでほぼ寝ずの状態でした。  

    和痛分娩の注射を受けてから身体の余計な力が抜けて、

    なんと陣痛と陣痛の間のタイミングはすべて爆睡でした。

 自然と寝ちゃって、陣痛で起きる!→ いきむ!!ができました。

 あいだで寝れたおかげか最後まで気力と体力ともにすべて出し切れました。

 和痛分娩を受け、本当に良かったです。分娩時間も自分の想像以上に短く、

    するっと生まれたのは体力温存で眠れたからかなと思います。

 

<ぺチロルファン筋注を受けた・かなり良かった>15/40

・自分では緊張が解けず、早い段階から陣痛に耐えるのに苦労しました。

 和痛分娩で痛みが完全になくなることはないものの、十分に意識をぼんやりさせたので、

    時間がたつのが早く感じられ、なんとか無事に赤ちゃんを産むことができました。

・陣痛の合間にうとうと眠ることができ、リラックスをして過ごすことができた。

 また。血圧が高かったが、薬を使うと血圧が下がり、落ち着いて出産することができた

・気持ちが楽になり、リラックスすることができた。

一人目の時よりピーク時の痛さがだいぶ違ったように思います。

    それによって先生や助産師さんのおっしゃっていることを冷静に聞けたように思います。

子宮口 3cmですでに痛みが強すぎて絶望していましたが、麻酔後1時間で

 子宮口 9cm?全開までいっていてその間痛みがほぼなくて楽になれたのがよかった。

・陣痛がきている時ときていないときのメリハリがついて良かったです。

 陣痛がきていない時は勝手に力が抜けるので、体力も長持ちしそうだなと思いました。

 

<ぺチロルファン筋注を受けた・まずまず良かった>4/40

・和痛の薬が効き始めたのが、分娩の後になってしまったが、

    後陣痛を感じることが無かったので和痛を利用して良かった。

・きつい時に和痛分娩が打てるというだけで心強かったです。

・頭が少しぼーっとしたので陣痛の怖さが少し紛れた。

 

<ぺチロルファン筋注を受けた・良くも悪くもなかった>4/40

痛みは和らが無かったが、陣痛の間の休みは意識が遠のくくらい力は抜けたと思う。

・子宮口の開きを助けえてくれた点は良かったですが、注射をした直後から

    ふわふわした感覚になり、少し怖かったです。

・痛みがよくわかってしまった。あまり効かない体質だったのかも?

・経産婦というのもあり、せっかく注射して頂いたのに生まれるまでの速度がはやすぎて、

  終わった後に効いてきた。

 

<ぺチロルファン筋注を受けた・良くなかった> 0/40

 

〇実施の実際について

ご本人が希望されれば、分娩のどの時期からでも行えます。

ご予約は必要ありません。薬剤やモニター準備の時間だけ頂ければ、

簡便に、24時間365日、夜間でも行えます。

ただし子宮口3cm開大までとそれ以上とは

使用できる薬剤が異なります。

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ペチロルファン筋注は子宮口開大3cm以上となってから使用します。

安全性をさらに増すために産婦さんの酸素飽和度モニターと

胎児心拍陣痛モニターを装着します。

痛みを感じにくくする薬剤ですので陣痛そのものは弱まらず、

痛み・不安が軽減できるために、

余分な力が抜けて本来の分娩進行状態となり、

結果的に急速に分娩が進行することが多くみられます。

〇 2025年8月15日からは同意書を作成しました。

 ご署名頂きましたら、実施します。

 同意書はこちら

 

〇 注意点について

短時間ですが呼吸抑制が出る場合が

ありますので、酸素飽和度モニターを装着して

必要があれば鼻から酸素を投与します。

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母体の呼吸抑制が出るのは最初の10~30分程度の 短時間のみです。

現在までにぺチロルファンを150例以上の方に行っておりますが、

ぺチロルファン投与によってお腹の赤ちゃんの調子が悪くなったことは一例もありません。

頭から発生した、余分な緊張・不安が取り除かれ、

子宮本来の自然陣痛、自然進行そのものになるからだと考えています。

痛みを感じにくくなると同時に眠くなりますので

それまで痛みを訴えておられた方も陣痛間欠時に

眠られる方がほとんどです。

そのため、経産婦さんの中には半分眠ったまま分娩になり、

さらに分娩後にも眠った場合、逆行性に分娩の記憶が薄れる場合すらあることを

ご了解ください。

 

〇 硬膜外麻酔分娩との比較

「ペチロルファン筋肉注射」「硬膜外麻酔」 のそれぞれの特徴を以下にまとめました。

項目

ペチロルファン筋肉注射

硬膜外麻酔

手技

筋肉注射で容易・簡便。24時間、 

希望から数分後に、どなたにでも可能

背中からチューブを入れて麻酔薬を注入。

特別な技術が必要。常時施行は比較的むずかしい。

費用

比較的安価(当院:約2万円/日)

比較的高価(10〜20万円程度)

効果

痛みを和らげる。無痛ではない。

強力な鎮痛効果。分娩痛を大きく軽減。

よくある副作用・有害事象

呼吸抑制(酸素投与で対応可能)。

低血圧、発熱、かゆみ、尿閉、吐き気・嘔吐、等。

まれに起こる

有害事象

特になし(大きな合併症はまれ)。

硬膜穿刺後頭痛、足のしびれ・力が入りにくい、 

感染、血腫、高位脊椎麻酔、局所麻酔薬中毒、等。

分娩への影響

分娩が急速に進む場合があり、

出産立会いが間に合わないことあり。

分娩が長引く可能性あり。吸引分娩や鉗子分娩が 増えることあり。

赤ちゃんへの影響

一時的に呼吸抑制がみられることが ありうるが、あっても軽度。

一時的に心拍数が下がることがあるが、通常は医師が適切に対応。重大な影響はほとんどなし。

総合的な特徴

手軽に行えて費用も安い。

安全性は高い。効果は中等度。

強力な鎮痛が得られるが、施行に特別技術が必要。費用が高く、まれに重い合併症のリスクあり。

まとめ

  • ペチロルファン筋肉注射:手軽で安価、効果はやや軽め。安全性が高い。
  • 硬膜外麻酔:強い鎮痛効果が得られるが、費用が高くまれに中~重篤な合併症があり、特別技術必要。
  • 硬膜外無痛分娩を選択される場合は専任の産科麻酔担当医による管理体制が整っていることと

使用薬剤が何かをご確認されることをお勧めします。

 

〇 ぺチロルファン筋注和痛法の安全性について

・ペチロルファンは日本でも1967年から使用し続けられている薬剤です。

 PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)が認めた

 添付文書で「効能又は効果」として「無痛分娩」の適応を

 取得しています。

 従って、適正に使用されたペチロルファンにより健康被害が万一、生じた場合は

「医薬品の副作用等による健康被害救済制度」により国からの補償が得られます。

 ペチロルファン配合注HD/ペチロルファン配合注LD

 

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国際的エビデンス(Cochrane, NICE)

・Cochraneレビュー(2018):ペチジンを含むオピオイド鎮痛は母体に中等度の満足度と一定の鎮痛効果をもたらすが、新生児に明らかな有害影響は示されなかった。

Parenteral opioids for maternal pain management in labour - Smith, LA - 2018 | Cochrane Library

・NICEや英国助産師ガイドライン:助産師単独でのペチジン筋注が2回まで認められており、英国では現在も約25%の分娩で使用されている。

Labour pain relief: intramuscular opioids – pethidine and diamorphine | NCT
Opiate Injections - Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust| NHS

国内臨床研究(衣笠論文)

・177例のペチロルファン使用群と354例の非使用群を比較し、Apgarスコア低下・呼吸障害・授乳障害の増加は認められなかった。

・母乳哺育率も差はなく、母体副作用は軽度・一過性

当院での成績(2022年9月〜2025年7月)

• 延べ146例で施行(反復投与13例)。現在は150例以上に使用
• 新生児に重篤な有害事象は認められず、呼吸状態や授乳に大きな影響はなし。

〇痛み、不安、眠気から解放され、

ご自身が持っている 「本来のお産の力」を引き出す、「当院の和痛分娩」を

「元気な赤ちゃんを元気にそして楽にお産する」

ためにぜひお役立てください。

 

〇 和痛分娩の患者様アンケートはこちらをご覧ください。

 

〇 当院院長が 2025.07.14に済生会兵庫県病院で開催された

 第8回北神・三田周産期医療検討会で発表したパワーポイント

 はこちら

 

〇院長私見

当院院長の私見を記します。あくまでもご参考まで

続きはこちら(内容は完全に私見ですので閲覧にはご注意お願いします。また、内容に対するご意見はお控えくださいますようにお願いします。)

・2025年10月から東京都で硬膜外麻酔無痛分娩への

助成金支給が始まります。これに伴い、全国的に硬膜外麻酔無痛分娩への

要望が増えることが予想されます。

しかし、硬膜外麻酔無痛分娩は妊婦さんの背中に

チューブを挿入するといった、特別な技術が必要となります。

通常産婦人科で行われている、腰椎麻酔と似ていますが、

まったく異なった手技です。

当院院長は神戸大学大学院在籍中の麻酔科研修コースとして、

6か月間、麻酔科医としての勤務をしており、

その時から将来必要となると考えて技術を習得しています。

ただ、そのような院長であっても、現在の当院での導入は

安全性を考慮すると、躊躇せざるを得ないのが実状です。

ましてや、そのような経験のない産科医師が直ちに取り組むのは

きわめて困難であるので、多くの産科医療施設では実際の

導入は困難で、多くの産科医師が大変困惑しています。

実施可能な病院でも夜間・休日などの対応はきわめて困難です。

このままの状態で硬膜外麻酔無痛分娩が広まった場合、

多くの産科医療施設がそれに対応できないために分娩数が減少し、

それによって分娩取り扱いを止めざるを得なくなる事態が次々連鎖的にと起こる

可能性があり、大変強く危惧されています。

実際に、他施設の産科医師からも当院にそのような声が寄せられています

 

・硬膜外麻酔無痛分娩は本来、産科麻酔全般に習熟した医師が専任で行うべきであると

考えられる医療行為だと思います。

現在の日本では米国などと異なり、産科麻酔専門医の数は非常に限られ、

4時間365日 日本全体の分娩すべてをカバーすることはまったくもって不可能

です。すなわち多くの日本の妊婦さんは硬膜外麻酔無痛分娩の

恩恵を受けることができません。

当院院長 米国産科病棟 滞在記

続きはこちら

・当院院長は25年前の神戸大学病院病棟主任時代に

病棟改修の参考にするために当時、米国病院ランキング

10年連続第1位であった、Johns  Hopkins大学病院の

産科病棟に短期間ですが滞在してきました。

そこで見た、本物と感じた周産期医療は、

24時間365日、日曜・祝日関係なしに、同じ医師数の体制

すなわち医師は二交代制でした。

そして産科専用の手術室が2室あり、その各部屋に

専属ナースが準備をして直立不動でいつでも帝王切開術を

開始できるよう待機しているのが、産科病棟からガラス越しに

見えるようにしてありました。

 そして、なんといっても産科病棟を常時ウロウロしている人は

誰かと思えば、産科麻酔医であって、産科医ではありませんでした。

そうであるから硬膜外麻酔無痛分娩や

TOLAC(帝王切開後の経腟分娩トライアル)

などが行えるのだと感じました。

そのよう体制でも、そこでは来院してすぐ生まれてしまう人が多く、

全米平均約80%程度の硬膜外麻酔無痛分娩実施率に対して

50%少ししかできなくて恥ずかしい、と産科麻酔部長が話していました。

 

 

・無痛分娩に関する資料を見るときには、

米国などのように産科麻酔医が確保されている状況を

頭に置かねばなりません。米国では産科麻酔医の

仕事がなくなると困るので、ぺチロルファン使用されていないと

考えて間違いないでしょう。

一方、英国では助産師が主導して使用しているようで、

 2回までなら、医師の処方・指示なしで病院の中ででも

ぺチロルファンを使用できる、というのが現況の様です。

 ぺチロルファンはそういう位置づけのものであると思います。

痛みがあったらまず市販のカロナールを内服して、

それでも治まらなければ病院へ行って医師の診察を受けるのと

そう大きな違いは無いのではないでしょうか?

 

 

 

・さらに例えると、硬膜外麻酔無痛分娩は、

銀座の高級すし店でお寿司を食べるようなものと思います。

そこのお店に予約を取ることができ、その時間にそこへ行くことができ、

さらに高額の支払いをできる方だけが享受できるのです。

それは大変良いものなのでしょうが、供給量も限られており、

物理的にほとんどの人はそれを口にすることができません。

一方で、ぺチロルファン筋注和痛分娩は「回転ずし」なのかもしれません。

冷凍の溶かし方が良くないと、いまひとつの場合もありますが、

きちんと出された場合は結構なレベルにあると実感します。

十分ではないでしょうか?なんといっても圧倒的にコストが低い!!

これが最もわかりやすくて実際に近い例えかと思い記載しました。

 

・このように産科麻酔医不足の隙間を埋めるのが「当院の和痛分娩」

「ぺチロルファン筋注による和痛分娩」だと思います。

 

・ぺチロルファンは世界中で50年以上使用されても

母体死亡も新生児死亡も報告がない、安全な薬剤です。

細かい注意は必要だと思いますが、硬膜外麻酔無痛分娩で

起こりうる、きわめて稀ではありますが、

重篤な有害事象とは全くレベルが異なって安全です。

 

 

 

・さらには筋肉注射ですので、産科医師でも、助産師でも特別な

 トレーニングや技術獲得も必要なく、直ちに開始することが

 できます。

 ただし、麻薬に分類されるために取り扱いに免許は必要です。

 

・なお、ぺチロルファンが新生児に良くないのでは?

という論文がありますが、1970年前後のものが多く、

静脈注射であったり、例数が極端に少なかったりしており、

 その後の論文ではそのような指摘はされていないことを

追加指摘したいと思います。

 

・いずれにせよ、Evidence Based Medicineの総本山である、

Cochrane Reviewでその安全性と存在意義を認められている薬剤です。

 

・ぺチロルファンを2回接種してもダメな場合に初めて硬膜外麻酔を行う

のが医療資源を正しく使った、本来の医療の在り方だと思います。

ただし、当院の成績では90%の妊婦さんが1回の使用で分娩に至って

おられます。

・ひとりでも多くの妊婦さんが「当院での和痛分娩」である

「ぺチロルファン筋注」によって「救われた」気分になり、

元気な赤ちゃんを元気に楽に分娩していただきたいと願っています。

 

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