ペチロルファン筋注を用いた和痛分娩について
〇 ペチロルファン筋注を用いた和痛分娩について
当院での和痛分娩は「ぺチロルファン筋注」を用いて行っています。
痛みを完全に取り除いて「無痛」にするのではなく、
陣痛の苦痛を「和らげ」、安心して出産に臨めるようにする方法です。
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痛みと分娩進行の状態などにより
3種類の薬を随時使い分けています。
主として用いている ペチロルファンはペチジン塩酸塩と
レバロルファン酒石酸塩の配合薬で、
1967年から使用されてきた、PMDAの認定を受けた添付文書で
「無痛分娩」の適応を持っている、安全性の高い薬剤です。
しかし、1985年ごろからの自然分娩礼賛の時代が
続くうちに現在では忘れられており、
当院院長より少し若い世代の産婦人科医師は
薬剤そのものの名前も知らず、使用経験も無いために、
その有用性を知らない場合が多いのが実状です。
ただその効果は高く、安全性も高いことが確立しています。
英国などでは現在も助産師・産科医師によって多く使用されています。
安全性については後でさらに詳しく記載します。
〇実施の実際について
ご本人が希望されれば、分娩のどの時期からでも行えます。
ご予約は必要ありません。薬剤やモニター準備の時間だけ頂ければ、
簡便に、24時間365日、夜間でも行えます。
ただし子宮口3cm開大までとそれ以上とは
使用できる薬剤が異なります。
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ペチロルファン筋注は子宮口開大3cm以上となってから使用します。
安全性をさらに増すために産婦さんの酸素飽和度モニターと
胎児心拍陣痛モニターを装着します。
痛みを感じにくくする薬剤ですので陣痛そのものは弱まらず、
痛み・不安が軽減できるために、
余分な力が抜けて本来の分娩進行状態となり、
結果的に急速に分娩が進行することが多くみられます。
〇 2025年8月15日からは同意書を作成しました。
ご署名頂きましたら、実施します。
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〇 注意点について
短時間ですが呼吸抑制が出る場合が
ありますので、酸素飽和度モニターを装着して
必要があれば鼻から酸素を投与します。
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母体の呼吸抑制が出るのは最初の10~30分程度の 短時間のみです。
現在までにぺチロルファンを150例以上の方に行っておりますが、
ぺチロルファン投与によってお腹の赤ちゃんの調子が悪くなったことは一例もありません。
頭から発生した、余分な緊張・不安が取り除かれ、
子宮本来の自然陣痛、自然進行そのものになるからだと考えています。
痛みを感じにくくなると同時に眠くなりますので
それまで痛みを訴えておられた方も陣痛間欠時に
眠られる方がほとんどです。
そのため、経産婦さんの中には半分眠ったまま分娩になり、
さらに分娩後にも眠った場合、逆行性に分娩の記憶が薄れる場合すらあることを
ご了解ください。
〇 硬膜外麻酔分娩との比較
「ペチロルファン筋肉注射」 と 「硬膜外麻酔」 のそれぞれの特徴を以下にまとめました。
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項目 |
ペチロルファン筋肉注射 |
硬膜外麻酔 |
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手技 |
筋肉注射で容易・簡便。24時間、 希望から数分後に、どなたにでも可能 |
背中からチューブを入れて麻酔薬を注入。 特別な技術が必要。常時施行は比較的むずかしい。 |
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費用 |
比較的安価(当院:約2万円/日) |
比較的高価(10〜20万円程度) |
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効果 |
痛みを和らげる。無痛ではない。 |
強力な鎮痛効果。分娩痛を大きく軽減。 |
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よくある副作用・有害事象 |
呼吸抑制(酸素投与で対応可能)。 |
低血圧、発熱、かゆみ、尿閉、吐き気・嘔吐、等。 |
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まれに起こる 有害事象 |
特になし(大きな合併症はまれ)。 |
硬膜穿刺後頭痛、足のしびれ・力が入りにくい、 感染、血腫、高位脊椎麻酔、局所麻酔薬中毒、等。 |
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分娩への影響 |
分娩が急速に進む場合があり、 出産立会いが間に合わないことあり。 |
分娩が長引く可能性あり。吸引分娩や鉗子分娩が 増えることあり。 |
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赤ちゃんへの影響 |
一時的に呼吸抑制がみられることが ありうるが、あっても軽度。 |
一時的に心拍数が下がることがあるが、通常は医師が適切に対応。重大な影響はほとんどなし。 |
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総合的な特徴 |
手軽に行えて費用も安い。 安全性は高い。効果は中等度。 |
強力な鎮痛が得られるが、施行に特別技術が必要。費用が高く、まれに重い合併症のリスクあり。 |
まとめ
- ペチロルファン筋肉注射:手軽で安価、効果はやや軽め。安全性が高い。
- 硬膜外麻酔:強い鎮痛効果が得られるが、費用が高くまれに中~重篤な合併症があり、特別技術必要。
- 硬膜外無痛分娩を選択される場合は専任の産科麻酔担当医による管理体制が整っていることと
使用薬剤が何かをご確認されることをお勧めします。
〇 ぺチロルファン筋注和痛法の安全性について
・ペチロルファンは日本でも1967年から使用し続けられている薬剤です。
PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)が認めた
添付文書で「効能又は効果」として「無痛分娩」の適応を
取得しています。
従って、適正に使用されたペチロルファンにより健康被害が万一、生じた場合は
「医薬品の副作用等による健康被害救済制度」により国からの補償が得られます。
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国際的エビデンス(Cochrane, NICE)
・Cochraneレビュー(2018):ペチジンを含むオピオイド鎮痛は母体に中等度の満足度と一定の鎮痛効果をもたらすが、新生児に明らかな有害影響は示されなかった。
Parenteral opioids for maternal pain management in labour - Smith, LA - 2018 | Cochrane Library・NICEや英国助産師ガイドライン:助産師単独でのペチジン筋注が2回まで認められており、英国では現在も約25%の分娩で使用されている。
Labour pain relief: intramuscular opioids – pethidine and diamorphine | NCTOpiate Injections - Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust| NHS
国内臨床研究(衣笠論文)
・177例のペチロルファン使用群と354例の非使用群を比較し、Apgarスコア低下・呼吸障害・授乳障害の増加は認められなかった。
・母乳哺育率も差はなく、母体副作用は軽度・一過性
当院での成績(2022年9月〜2025年7月)
• 延べ146例で施行(反復投与13例)。現在は150例以上に使用• 新生児に重篤な有害事象は認められず、呼吸状態や授乳に大きな影響はなし。
〇痛み、不安、眠気から解放され、
ご自身が持っている 「本来のお産の力」を引き出す、「当院の和痛分娩」を
「元気な赤ちゃんを元気にそして楽にお産する」
ためにぜひお役立てください。
〇 当院院長が 2025.07.14に済生会兵庫県病院で開催された
第8回北神・三田周産期医療検討会で発表したパワーポイント
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